Recommendation

介護関係従事者の方へ

木本 裕 様

社会福祉法人 筑水会 ライフサポート サンルーナ
デイサービス主任

柴田智 様

ケアフルクラブ悠々園
施設長

インタビュアー:ケアフルクラブを開設されたきっかけ、動機をお聞かせいただけますか。

柴田さん:三つ理由があります。ますます高齢化が進む中で、元気な社会を作っていかないといけないという個人的な思いが一つ。もう一つは、生まれ育った町田市に元気な社会が作れたらいいなということ。
最後は、自分自身が今まで、若い人たちと一緒に仕事をしているよりも、高齢者の方と一緒に仕事をしている方が、生き生きと仕事ができるなあという思いからです。

インタビュアー:素晴らしい実績を伺っていますが、利用者の声はいかがですか?

柴田さん:お褒めの言葉を多々いただきますね。「杖の必要がなくなった」「もう本当に何十年ぶりに2階に上がって洗濯物干したわよ」とか、「生活にハリができた」「一週間のスケジュールがきちんと決まって、メリハリがついて、朝はしっかりと起きるようになって夜は眠れるようになった」とか、あとは「薬の量が減った」「病院に通うことが少なくなった」等々のご感想をいただいております。
他方で、高齢に伴って病気が進行してしまってケアフルクラブでずっと居たいけれども、それが叶わなくなってきたっていう方がいらっしゃるのは事実ですね。

インタビュアー:加齢には、勝てないことはありますよね。

柴田さん:やっぱり一人ひとり平等に年を重ねていく中で、ご病気に負けてしまう方もいらっしゃるし、逆に元気になって、もう一回社会へ復帰する方も沢山いらっしゃいます。ついこの間もケアフルクラブ卒業された方が、ラジオ体操のサークルを作って、元旦以外364日、地域でサークル活動を始めたという方もいらっしゃいました。ボランティアを始めた、もう一回、自分の興した会社の役員になった方もいらっしゃるんですよ。

インタビュアー:リジェネレーションですね。通所されている方々の平均年齢はいくつくらいですか?

柴田さん:82.5歳ですね。ついこの間も96歳の方がご契約されたんです。冗談ではあるのですが、もう自分の足で棺桶に入りたいなっていうコメントをいただきつつ、ご契約させていただきました。

インタビュアー:男女比は?

柴田さん:65%が女性、35%が男性。それは変わらないですね、ずっと。
男性に沢山来てほしいけども、やはり女性の方が多いという現状はあります。男性は引きこもる方が圧倒的に多いですよね。もっと出てきた方がいいのにと思います。私たちの魅力がまだ足りないのかと考えたりもします。その魅力を上手に伝えていかなきゃいけないですよね。

そういった意味では、男性にはマシンをご利用されるといいと思うんですよ。よくお話しをさせてもらうのですが、グループレッスンって女の人は結構社交的で得意なんですけれども、男性がそんなグループレッスンの中に急に入るかっていうとなかなか難しいので。自分自身に問いかけ、マシンと向き合うトレーニングという意味ではとても良いのかなと思います。ケアフルクラブでも結構を力入れている分野です。

この2か月間にご契約させてもらった方が10人くらいいますが、みんな女性ですね。ちょっと男性が頑張らなきゃいけないなって、僕自身も思います。
今度新しく男性職員が入ってきました。やはり女性職員ばかりだと、なかなか男性も来づらい側面もあるかなと思います。そういう意味で、今後職員の配置についても考えなきゃいけないなというところがありますね。

インタビュアー:ケアフルクラブは自治体と密に連携しながら運営されてきた伺っています。地域の方に本当に感謝される施設を作られた事に対して自治体からの評価やコメントがあればお聞かせいただけますか。

柴田さん:本当に高い評価をいただいておりまして、特に連携している町田市の中ではフラッグカンパニーとして頑張ってほしいとも言われています。町田市もいよいよ昨年から総合事業が始まりましたし、ケアフルクラブが先頭に立って盛り上げていきたいと思っています。
町田市は、介護認定をして要支援を受けた方が、1年後に要介護になってしまう割合が7割なんです。

インタビュアー:そんなに高いんですか。

柴田さん:高いんですよ。多分どこの自治体もそれくらいかなと思います。その中でケアフルクラブは、奇跡のクラブと言われているんですよ。
ほとんどの方が継続して通所してくれている。そういった事業所がもっと増えるといいと思います。私もそのようなお話を各介護事業所にしてほしいという話をいただいています。

インタビュアー:ケアフルクラブさんでは要支援2の方が、要介護になる割合っていうのはほとんどないそうですね。

柴田さん:もちろんご病気の進行だとかありますし。無くは無いですけども、かなり少ないと思いますね。

インタビュアー:何%くらいですか?

柴田さん:利用者数の5%程です。

インタビュアー:すごいですね。

柴田さん:要因としては、運動の効果なのか、外出する機会が増えたことからなのか、外出する仲間が増えたからか…。
でも、運動だけじゃないと思うんです。運動だけだったら家でもできるから、やっぱり運動だけじゃないですよね。外出をすることとか、人と会うとか、人と目を合わせて喋るとか、身なりを整えるだとか、そういったところから体も心も、精神も動いて、現状を維持できるのかなと思いますね。

インタビュアー:コミュニティづくりにも力を入れられているそうですね。

柴田さん:社交は大事ですね。運動だけじゃないと思います。

インタビュアー:色々ご苦労もおありだとは思いますが、これから高齢者向けの施設、デイサービスだけではなく、介護予備軍、介護認定を受けてない方を対象に高齢者をターゲットにした運動型の施設を作ろうという方が増えていますが、そういう方に向けてメッセージをいただけますか?

柴田さん:ますます高齢化が進んでいますし、今65歳が27%という高齢化率ですが、数年後には30%超えてきて、今まだ現役世代と言われてる15歳から65歳までの人たちが今、2.3人で一人の高齢者を支えてるっていうかたちで、俗にいう騎馬戦型って言われてるんですね。それが数年後にはどんどん減ってきて、今度は1.3人、肩車式になると言われています。そのときに、いつまでも、お年をとっても支えられる側ではなくて、支える側でいてほしいという夢を、高齢の方も、我々仕事をする側も持ってなきゃいけないなと思っています。シニアの方々も一緒に頑張っていきましょうよっていう取り組みが、そういった熱意とともにある、ということはとても大事かなと思いますね。

インタビュアー:そういう熱意、伝わりますよね。

柴田さん:そうですよね、伝わってくると思いますね。一緒に頑張っていきましょうよっていうことですよね。僕たちも頑張るから、みんなも頑張りましょうよっていうことを伝えられるような人がとても大事だなと思います。そういう気持ちを持っている人が沢山出てきてほしいなと思うんですよね。
僕がこうやってシニアの方々と仕事をし出したというか、これ面白いなと思ったきっかけがありまして。当時は、フィットネスとか体づくりとか健康づくりにあまり経験のない方が本当に多くて、そんな人たちが、じゃあこの曜日のこの時間に来てくださいねっていうと、皆さん毎日日曜日みたいな感じの方が多いので、結構真面目に来てくれるんですよね。真面目な、適正な運動の処方をしてあげれば、皆がやっぱりどんどん元気になっていくってことを、自分もそうですし、参加してくれる皆さんも確認ができたっていうことがとても大きいですね。シニアの方っていうのは本当に真面目に、自分の健康を考えています。若い人に比べると健康に関してはしっかりと取り組んでくれる人が多いので、お互いに確認ができるっていう面白さっていうのはあると思うんですよ、仕事として。そんなところが面白味のあるところかなと思いますね。

インタビュアー:今後、こういった高齢者向けの施設の必要性は高まっていくと思いますか。

柴田さん:高くなってくると思います。介護保険が破綻するっていう時代が今もう来ていますけれども、それに頼らないでやっていかなきゃいけないっていうことを、施設で働く側も、利用者の方々も、考えていかなきゃいけない時代なので。ますます健康リテラシーを高めてあげて、意識させることが大事じゃないかなと思いますね。ちょっと敷居を下げてあげるということがとても大事だと思うんですよ。
フィットネスクラブだとか、パーソナルトレーナーだとか、そういったところも勿論大事だと思うんですけれども、もうちょっと敷居を下げてあげて気軽に普段着で来られるような健康づくりの場であるとか、そういったところにビジネスの面白味を見つけていくのも、これからの課題なのかな、と思っています。
薄利多売という言い方が良いか分からないですけれども、大勢の方が来てくれて、安いお金でもいいから大勢の方が来てくれる、大勢の方が集っていただける、っていうところが必要あるのかなと思いますね。

インタビュアー:利用者さんの笑顔を見るのが一番励みになりますよね。

柴田さん:そうですね。健康になりたくないと思っている人はいないと思うんですよね。
だからそこを上手に、健康になりたいという気持ちをつついていくっていうことが大切だと思います。
普段健康な人っていうのは健康を意識しない人が多いですが、例えばちょっと風邪をひいたとか、ちょっと膝が痛いとかなってくると、健康を意識するんです。そこを上手くつついていくことが、ビジネスとしては面白いのかなって思いますね。

健康に携わるような事業所、当施設を含めて、そういった事業所や会社が繁盛するっていうのは十分な地域貢献とか、社会貢献だと思っているんですよ。正しいことをきちんとやって、皆さんが健康になって元気になっていただければ、元気な社会が作っていけるし、そうすれば医療費も介護保険費も、色んな社会保障の費用がだいぶ軽減されると思います。そこで、やはり事業所はもっと頑張らなきゃなと思いますし、事業所が繁盛するということがとても大事なような気がします。

健康をしっかりとビジネスの中に捉えて、繁盛していかないと、僕たちが、地域貢献になっていかないんじゃないかなと思いますね。ただ、それを、いいと思ってない人も沢山います。「俺たちみたいな層から金をもらっていくなんて」と言う人もいるけれども、僕はやっぱり介護事業所だとか、そこに携わる職員が、豊かになっていくっていうことは、十分な地域貢献だというふうに思っています。

インタビュアー:大事ですよね。

柴田さん:ケアフルクラブも頑張っていかなきゃなっていうふうに思いますし。

インタビュアー:そうですね。ぜひ頑張っていきましょう。本日はありがとうございました。

インタビュアー:どのような想い、きっかけで施設をスタートされました?

木本さん:これまで、スポーツクラブや行政の健康体操教室を中心に活動をしていましたが、この介護施設立ち上げのスタッフとして初めて「介護の業界」に参入しました。大型デイサービス施設と言われても、当初はどう運営をしていくのかまったくわからない状態でした。介護の経験がない私が介護施設を運営する。本当にできるのだろうか。そんな想いを抱えながらのスタートでした。全国各地にある介護施設は、「リハビリ特化型」とか「次世代型」と言うようなコンセプトでそれぞれの特徴を持って運営をしています。そこで私たちは[ホテルのようなサービスとスポーツクラブのような施設」をかかげ展開をしていこうとしました。

介護はなんでもしてあげる・手を差し伸べるというイメージがありますが、本当にそれがその方にためになっているのでしょうか。本当はできることなのに、それをやってあげることでその方のもっている身体的能力を奪っているのではないか。そのような問題意識をもとに、何ができて何ができないのかを把握し、残存機能の維持・向上をさせることで、今より少しでも楽しく過ごせることのお手伝いをすることが大切なことだと考えています。その思いをもとに、施設の設計から行ってきました。コンパクトな作りで閉鎖的な空間ではなく、それぞれ特徴をもった、大きなホールのようなフロアーと大小様々な部屋を作りました。TRXスタジオ・トレーニングジム・スタジオ・プールを完備し、運動に特化した施設となっています。エクササイズプログラムを月単位でスケジュールし、体力測定とアセスメントに基づいたパーソナルデータをもとに、個人プログラムを作成し指導を行っています。スポーツクラブと同じような感覚で施設を利用していただいて、いわゆる介護施設に来て「上げ膳据え膳」として何でも誰かにやってもらうのではなく、自分でできることは自分でやる、やりたいことを自分で選択し実行していく環境を作っています。何でもしてあげることで「利用者の回復機会を奪う」ような介護は、基本的には行わない。そんな想いで施設を作っています。

インタビュアー:ライフサポートサンルーナの特徴を教えてください。

木本さん:特徴は、自己決定・自己選択ができるシステムを導入しているところです。エクササイズプログラムとカルチャープログラムをスケジュールし、入館の際にキオスク端末にて「自分のやりたいプログラム」を簡単に選択できるのです。予約をしたプログラムの時間に合わせて利用者が自ら部屋間の移動をすることで、時間の管理をし、また本人の歩く歩数を増やすようにしています。
もうひとつ特徴があるのですが、エクササイズプログラムに参加すると、施設内通貨「ルーナ」獲得できます。この「ルーナ」を使ってカフェでコーヒーを飲んだり、お菓子を購入したり、カルチャープログラムに参加できるようにしている。生活支援の一環として行っています。「ルーナ」が貯まって場合は個人の通帳を発行し、銀行のような管理システムも行っています。お昼についてもバイキング形式で、専属の調理師による手作りのメニューで、好きな物を好きなだけ、いただいてもらうようになっています。入浴設備に関しては、温泉の源泉を搬入し大浴場のほか個浴もでき、心身のリラックスができるようになっています。

インタビュアー:介護の現場において、メディカルフィットネスはどのような役割を担っていますか。

木本さん:単なるリハビリプログラムとしてでなはく、利用者の「やる気」を上げるような環境を作っています。「高齢者だからこんなプログラムはできないだろう」という考えは、むしろ介護側が思っていることで、実際にプログラムを行ってみると利用者の行動や機能回復の中心になっている。理学療法(PT)や作業療法(OT)の個別機能訓練も必要な要素です。しかしサンルーナではむしろエクササイズプログラムを受けたいという思いから、利用者が増えていることも現実としてある。それには、指導する側(スポーツトレーナーやパーソナルトレーナー)の人材が必須となってくるのが、今後の課題としてあります。

インタビュアー:実際にフィットネスプログラムによって、利用者はどのように変化していますか
お客様の声、実例を教えてください

木本さん:要介護2の80歳の女性がいらっしゃいまして カート歩行をされている方ですね。
そんな中、TRX・プール歩行・トレーニングジムエクササイズを週2回行うプログラムに参加されています。TRXにてストレッチ運動を行いプールエクササイズで関節可動域を広くすること、プラス、1週85mの施設内歩行20周を目標としています。そして、1ヵ月終了後にインボディーによる筋肉量の変化を可視化しジムプログラムへの変化を入れていくようなサイクルを行っています。
成果が出始めたのは開始半年後でした。カート歩行から杖歩行に移行することができたのです。元々施設内の歩行を20周から始めていましたが、現在では100周を2時間かけて歩いています。中でのトレーニングだけでなく、富士裾野ウォーキングツアーに参加するなど生活も充実されているようです。
もうひと方は、要介護1の男性で、脳出血における左片麻痺を持っていらっしゃいました。当施設では、TRX・プール・ジムの週2回のプログラムで参加されていました。最初は、左片麻痺での杖での歩行で、エクササイズに参加されていたのですが当初はTRXしか行っていなかったんですね。それが、現在はプールエクササイズとトレーニングジムエクササイズによるプログラムを行っていらっしゃいます。現在、歩行に関しては、自宅でもほとんど杖は使っていない状態とのことです。

インタビュアー:介護施設を運営している方へ、メディカルフィットネスを導入するメリットなど、メッセージを下さい

木本さん:機能訓練士、たとえば理学療法士(PT)や作業療法士(OT)が施設に在籍していることは、価値向上や信用を高めていくうえでも必要なことだと思います。一方で、デイサービスに通ってくる利用者またはご家族の希望は、回復を目標としている。
機能訓練としては、マッサージや施術のような専門的なアプローチが効果的ではありますが、もっと利用者との距離を近づけ、楽しく行うには、インストラクターやトレーナーのスタッフが必要だと考えます。介護の資格を持っていること不利ではありませんが、そこにプラスし、違う視点でアプローチができるスタッフ育成はこれからの介護には必要だと思います。

医療従業者の方へ

介護関係従業者の方へ

ジム・フィットネス関係従業者の方へ

プロスポーツ・アスリート業界の方へ

会員登録のご案内日本メディカルフィットネス研究会JMFS        公益財団法人日本健康スポーツ連盟