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プロスポーツ・アスリート業界従事者の方へ
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インタビュアー:PHYSIT CONDITIONING(以下フィジット)を開設された背景やきっかけを教えていただけますか?
大森さん:もともと札幌で医療の道に進んでいましたが、次第に地元の北見のほうから、スポーツ選手や高齢者の方がリハビリを受ける施設がないという話をはじめ、医療、リハビリで困っている話を聞く事が多かったんです。
わざわざ札幌まで来て治療、もしくはリハビリを受ける方が非常に多かった。そこで、地元でメディカルだけではなく、いわゆるフィットネス・リハビリ・トレーニングができる施設というのも必要なんじゃないのかなと思ったのです。
特にスポーツをされる方が運動中に怪我をしたとき、もしく高校生が部活で怪我をしたときに、手術をする・しないに関わらずリハビリである程度治したいという時に、そういう施設がない、というところがポイントでしたね。
インタビュアー:それは医療の現場、医療機関だけではやはりどうしようもない部分と言いますか、例えば医療機関にあるリハビリ室のさらに進化したかたちのものっていう位置づけですかね?
大森さん:私が札幌で勤務していた病院では、医学的なリハビリテーションとトレーニングもやっていたのですが、そういった施設がお住まいの地域にないために、わざわざその病院まで地方から来られている方もいました。だからこそ、私の地元であり、札幌から特急列車でも4時間半かかる北見に、施設を作りたかったのです。
インタビュアー:実際に施設を開設されて8ヶ月ですね。実際その対応された利用者の変化や声をお聞かせいただいてよろしいですか?
大森さん:やはり、どこかしら体を怪我されている、もしくは持病を持たれている方が多いですね。
例えば病院で治療を受けて運動した方がいいとアドバイスを受けた方や、リハビリに通っていてもある程度の日数がたったのでもうリハビリが終了し、あとはご自分で運動してくださいと言われた方が、実際にどういう運動したらいいのかわからないことが多いんですね。そこで、今までやってたリハビリと同じように自分でも運動をしたいがアドバイスが欲しいということで、来ていただいている方が多いです。
フィジットではそういった方々に沿う内容を提供していますが、利用者の方々からは、本当に来て良かった、良くなった、今ではこういう事が出来るようになった、日常生活でとかQOLが上がった、といった声をいただいています。
インタビュアー:QOLの改善が非常に大きい効果だったというご意見が多いのですね。
大森さん:そうですね。利用者の中には、末期の癌の患者さんもいらっしゃいました。カバーケアの状態なんですけれども、本人はテニスをしたいという思いがあり、実際にテニスを出来るところまでいったのです。体は当然、どんどん弱くなり、病態自体は悪くなっているんですけれども、動く事はできると。最後の生きがいなんですね。
インタビュアー:カーリングチーム ロコ・ソラーレ北見の選手たちもフィジットを拠点にトレーニングをされていると伺っておりますが、アスリートにおけるメディカルフィットネスの有用性についてお聞かせ頂けますか?
大森さん:アスリートの方も先ほどお話した一般の方も基本的には同じなんですけども、メディカルフィットネスの有効性が非常に高い感じています。アスリートになればなるほど、一般の方よりも怪我だとか、故障っていうのがすごく身近なものになってると思うんですね。
ですので、故障だとか怪我が多いっていうことはそれだけ医学的なところも必要になってきます。
通常トレーニングをしていながら更にそういう医学的なところとの距離っていうのは非常に近いので、それが一つのメディカルフィットネスっていう施設の中で可能になるっていうのはメリットだと思います。
時間のメリットもあると思っています。二つの施設をまたいでいくとなった時に、一つの施設に行けばすべてが網羅されるっていうのが時間的にもかなり節約となり、メリットが高いんじゃないかなと思いますね。
インタビュアー:メディカルフィットネス施設ができて良かったという喜びの声、反応はありましたか?
大森さん:メディカルフィットネスがなければ、行くところがなくて困っているという話を聞きます。特に病院に通っていた方が、病院の治療・リハビリが終了になった、けれども、まだもうちょっと本人は何かしらのことがやりたいっていう方が多いんですよね。
ご自身がそういう基礎的な疾患を持っていたり、持病を持っていたりするので、他の普通のスポーツクラブだとかフィットネスクラブさんに行ったとしても、ハードなトレーニングだとかエアロビクスのスクールには入ったりはできない。だけどこの施設はひとりひとりに対して適切な運動の処方をしてくれて、実際に一緒にやっていただく事もできる。そういう声は非常に多く皆さんから聞きます。
インタビュアー:利用者に喜んでいただけることが一番運営する側としても嬉しいですよね。
大森さん:そうですね。嬉しいですね、脳卒中で片麻痺になられた方が、下肢は病院の方である程度良くなって、しかし通所開始当時、まだ全然力が入らなくて、家事とか料理が上手くできなかったという方がいらっしゃるんです。その方が、今日、自宅から50分かけて歩いて来られたんですよ。現在は、お米を研いだりですとか、簡単なものを切ったり食べたりというところまで回復されました。
インタビュアー:どれくらいの期間通所して改善されたのですか?
大森さん:その方は3・4ヶ月だと思います。
元々リハビリでいいところまでは来ていたと思います。ただ、一人で家でこういうことやったらいいよと言われて病院で終了してしまうと、なかなか不安もあると思うんですよね。
家事をやっていても、ちょっと上手くいかなかったり、どこかに不具合が生じてきたりした時に、やはりフィジットでちょっとしたケアを受けたり、ちょっとした体の使い方のアドバイスを受けたりすることによって、よりスムーズにADLをアップしていく、QOLをアップしていく事が出来るんじゃないかと思いますね。
インタビュアー:利用者同士でのコミュニケーションはありますか?
大森さん:あります。クラブで懇親会と言いますか、スポーツ大会を、レクリエーションを企画してやったんですけども、平日メインの方と、土日がメインで来られてる方、午前中メインで来られてる方、午後、夕方メインで来られてる方という形で利用曜日や時間帯が違う方同士はなかなか会う機会がなかったんですよね。
それがレクリエーションする事によって顔見知りになっていただいたことで、施設内で一緒になった時にコミュニケーションが非常に取りやすくなったと言いますか、もうお客さん同士でもう和気あいあいと話しながらですね、トレーニングされてるっていう感じですね。
インタビュアー:コミュニティの場と言いますか、ソーシャルな場にもなっているという事ですね?
大森さん:そうですね。十分なってると思います。
インタビュアー:わかりました。それではスタッフの構成をお聞かせください。
大森さん:スタッフは理学療法士、トレーナー、柔道整復師と、おります。理学療法士は、運動を専門として認定をとっています。また、トレーナーは健康運動の実践指導師、実践指導者、ほかには障害スポーツだとかパーソナルトレーナーだとか、多様な資格を持っています。
スタッフの職種のバランスは、結構大事かなと思いますね。得意なところだけのトレーナーではなくて、やはり障害を持った方々もうちの施設には来るので、障害スポーツのトレーナーの資格を持った方が対応します。内科疾患の方が病院から勧められて運動しに来た方に対応するのは健康指導士や実践指導者です。そして、スポーツ選手がパーソナルトレーニングをしたいというご希望があった時にはその資格を持っている方が対応できる体制を整えています。
メディカルフィットネスの領域が広いので、ある程度の状況をカバーした資格を持っているっていうところが大事になってくるかなと思っています。
インタビュアー:最後にメディカルフィットネスを検討中の方にアドバイスを頂けますか?
大森さん:安心したいっていうところが一番強いと思うんですよね。要は自分がそういうところに行って大丈夫なのかとか、ちょっと不安がよぎってるところがある方は、その不安がスポーツクラブだけ、病院だけではなかなか拭いされない部分ってあると思うんですよ。
だけどメディカルフィットネスはその両方を持ってるところでは、色んな不安の解消の仕方がそこにあって、ニーズにこたえやすいっていうところが非常にあると思うので、ちょっとした不安のある方こそメディカルフィットネスを是非活用していただければと思いますね。
インタビュアー:はじめに、四家(しけ)さんがメディカルフィットネス施設Re-birth(以下リバース)の開設に至った背景をお聞かせいただけますか?
四家さん:スポーツをしていくと、必ず怪我が付き物になってきます。病院の対応としては、メディカルリハビリテーションという部分のみを行うところがほとんどなんです。例えば可動域が広くなったとわかったときに病院側としてはすぐに現場に復帰させるというのが通例になってしまっています。実際では、現場に戻ってもすぐには動けないという現状があります。これは、「アスレチックリハビリテーション」という部分が抜けてしまっているということでもあります。この部分をしっかり補わないと、基本的には怪我の再発を繰り返してしまったり、パフォーマンスが落ちてしまったりします。
ですが、アスレチックリハビリテーションを充足するだけの施設が単独で存在していても、それはそれで実は意味がないのです。きちんと「医療機関と現場を繋ぐ役割としてのメディカルフィットネス」という分野が必要だと思います。そういった場所がないと、復帰に向けてもスムーズにいきませんし、実際やれることやれないことに、すごく差ができてしまいます。そういった部分を補える場所がまず必要だ、ということがメディカルフィットネス施設開設の背景にあります。
理学療法士がいるだけではなく、他職種が絡むことで、怪我の復帰、リハビリテーションからパフォーマンスアップまでを一元化できるわけです。「現場に繋ぐ」ということについては、施設のスタッフが直接現場に行くこともできる。そういった環境が必要とされています。
インタビュアー:まさに医療とプロスポーツを繋ぐ役割を担われているということですよね。
四家さん:そうです。怪我をさせないための障害予防という観点でも対応できるようになります。
障害を起こさせないだけではなく、現在日本の医療とスポーツ界の現場には「障害予防だけだとパフォーマンスが上がらない」という課題があります。『パフォーマンスを落とさない・上げられる障害予防』という観点からもアプローチが必要だと考え、しっかりデータ化してパフォーマンスアップに繋げられるように、メディカルフィットネス施設を立ち上げています。
インタビュアー:なるほど。おっしゃっていたパフォーマンスが上がらないというのは、怪我にならないように気配りをするがために、それが逆にパフォーマンスアップの足枷になっていた、ということなのですね。
四家さん:そうですね。今までの現状では、データがないままにリハビリを行っているので、怪我をしないようにセーブしているというか。感じていい痛みもあれば、これ以上はやらない方がよいという痛みもあり、根拠がないままリハビリをしているのが現状です。
パフォーマンスを上げる事を目的にしながらリハビリを行うことが障害予防に繋がっていきます。実際のアドバイス内容としては、「この体の機能を有していればバンバン動かしていい」とか、「このトレーニングするとあなたの場合はこの機能が落ちてしまう、このトレーニングは合っていないのでパフォーマンスが下がります」といったところですね。
インタビュアー:リバースでは沢山の運動関係者をクライアントにお持ちだと思いますが、クライアントの皆様のご感想というのはいかがですか?
四家さん:まず、来ていただくきっかけとしては、パフォーマンスを上げるために勿論ウエイトトレーニングは必要になってくるのですが、ウエイトトレーニングのみになってしまって、その後の体の機能性に関しては疎かになってしまい、パフォーマンスが上がらない、という課題で当施設に来て下さるケースが多いですね。
ウエイトトレーニングだけ、フリーウエイトだけに取り組ませる施設では、一般的に、筋肉を大きく、体を大きくしてパワーが上げる、という目標を持たせています。しかし、その目標のみを掲げトレーニングをすると、筋力が上がっていても機能性が上がらず、体が固くなり、自分で思うように体を動かせないという問題が起こりやすくなります。そのような悩みをお持ちの方が「しっかりウエイトトレーニングをして筋肉をつけたのに、パフォーマンスが上がらない」と、当施設に最後にご相談にいらっしゃるケースも多いです。
特に競輪選手で多いんですが、スピードが上がらないという課題を持ちながら当施設にいらした方を見た際、全然体が動かせていない状態となっていたことが、わかることもありました。
野球でもサッカーでもそうですが、ウエイトを付けてトレーニングしているのにスピードが上がらないとか、ボールの高さが思うように上がっていかない、という方も結構いらっしゃいます。その問題については実は、筋肉を大きくすることで改善できるものではなく、体の使い方を見直すことが必要なのです。
体の使い方、特に機能性に着目してパフォーマンスを細かく評価をしていくと、例えば狭い可動範囲でのパワーはあるけど、実際に競技として使う箇所の大きな可動範囲では筋出力がすごく弱くなってしまっている場合があるんですね。そういった課題の解決ができるという点で、当施設を頼りにしていただいているケースが多いです。
インタビュアー:今までのトレーニングでは、ひとつひとつの部位をクローズアップしていたのですが、それが繋がって線にならないと良くならないということですよね。
プロスポーツでは、パフォーマンスという観点から考えると、まずパフォーマンスコーチが付いていますよね?
四家さん:はい、ついてますね。
インタビュアー:リバースさんにいる方々は、フィジカルコンディショニングトレーナーという立場なんですよね。
四家さん:そうですね。
インタビュアー:子どもの頃からスポーツをやってる人は、まずパフォーマンス重視で来ていたと思うんですね。これまでパフォーマンス重視で来ていた方々が、コンディショニングの必要性を感じるというのは、なにかきっかけがあるのでしょうか。
四家さん:そうですね。中学生がプロにいくために、日本の社会では、いい高校に行ってある程度パフォーマンスを見せないとプロチームに入れないという現状があります。いい高校に行くためには、中学校でいい成績を残さなきゃいけない、いいパフォーマンスを見せなきゃいけないという現状があります。最近さらに若齢化してきていると思います。
ですので、中学校の段階で激しく練習しすぎてしまって体の不具合を生じたり、コンディショニングしないと試合に出られないというケースが増えているのが現状です。中学生くらいでなにかのきっかけがあって当施設を利用し、コンディショニングを上げていきたいというケースが多いですね。
インタビュアー:なるほど。ある程度、自己評価ができるようになってきた年齢からですかね。
四家さん:そうですね。一流のトップでやれる子たち、プロにいく子たちは、その段階で私たちに対する注文も多くあります。
やらされているというよりは、自分で「この不具合が、ここが動かしにくい」とか「このプレーのときこれが出来ない」などという注文を私たちにしてくれる方がプロに行くような方だというふうに、私は感じながらサポートしています。年齢としては、中学校の2年生くらいが起点として多いように思います。
インタビュアー:このような方にメディカルフィットネスをおすすめする、こういう観点で取り組んでいくと良いというアドバイスをいただけますか?
四家さん:何か障害がおきた時、保護者が治療方法を探すケースがほとんどかと思います。
保護者の方には、子どもたちを、より安全に将来に導くためのツールがメディカルフィットネスだという認識を持ってほしいと私は思っています。
メディカルフィットネスでは、コンディショニングも、パフォーマンスも、トータルコーディネーションができるのです。トータルコーディネーションとは医療機関と現場を繋ぐということです。現在、プロスポーツ選手がケアやパフォーマンス、ウエイトケアと様々な目的に合わせて色々な施設を回っていらっしゃいますが、それを一元化できる、情報共有できる環境もすごく魅力的だと思っています。
インタビュアー:リバースでは情報をスタッフ間で共有するためにどのようなツールを使っていますか?
四家さん:全員がカルテ、評価データを読めるようにしています。また、リハビリの事も、パフォーマンスのこともある程度共有している体制です。
その中で、自分はここから関わるという役割分担を専門性によって分けていく、というスタッフの置き方をしています。病院ですと理学療法士がみる、現場ではトレーナーが見ると、「そこから先は任せたから分からない」という風に分断されてしまうので、そうならないようなアサインにしています。
インタビュアー:四家さんの施設は非常にユニークで、色々な職種の方がいらっしゃるとお聞きしていますが、今のスタッフ構成を教えていただけますか?
四家さん:理学療法士が3名、柔道整復師が1名、日本体育協会のアスレティックトレーナーが1名、JATIなど健康運動実践指導者が2名、という構成です。
インタビュアー:様々な職種の方がいらっしゃって、それぞれの視点、観点から意見を交換しあえるのが良いのですね。
四家さん:そうですね。
インタビュアー:ありがとうございました。